この記事の要点

海外での飲食店開業は、事業の仮説づくり、市場調査、進出形態の確認、物件・資金計画、設計・施工、開業準備の順に整理します。物件の契約前に、予定する営業と必要な設備が実現できるかを確認することが大切です。

最初に決めるのは、国よりも店の役割

「日本で人気だから海外でも売れる」という期待だけでは、出店先を選ぶ基準が曖昧になります。まずは、現地の生活者に日常使いしてもらう店なのか、旅行者が訪れる店なのか、特別な日の食事を提供する店なのかを一文にまとめましょう。客層が変われば、必要な立地、価格、席の広さ、サービスも変わります。

最初の一枚の計画書には、客層・主力商品・想定価格・出店候補・投資の上限・運営責任者を記入します。決まっていない項目は空欄のままにせず、「何を確認すれば決められるか」を添えます。JETROも海外進出の準備として、目的の明確化、現地パートナーの見極め、事前調査を挙げています。

開業までに進める6つの工程

工程決めること・残す資料
1. 事業の仮説客層、商品、価格、投資上限をまとめた出店方針
2. 市場調査競合価格、利用場面、仕入れ、採用の調査記録
3. 進出形態の確認運営主体、出資、役割分担、現地の制度の確認事項
4. 物件・資金計画設備調査、賃貸条件、開業前後の支払い表
5. 設計・施工現地条件を反映した図面、見積もり、工程表
6. 開業準備検査・許可の確認、採用・研修、試運転、集客

工程は必ずしも一本道ではありません。物件の排気能力が足りなければ、調理方法や候補物件に戻って検討します。戻る判断を早く行えるように、各工程の終わりで「進める・条件を変える・見送る」を決める場を設けておきます。

BOKU(Mexicoの店舗空間
掲載事例:BOKU / Mexico|engineの設計事例。本文の一般的な確認事項と、個別案件の契約・工事条件は異なります。

物件契約の前に、料理と設備をつなぐ

厨房はメニューから考えます。焼き物が多い店、麺をゆでる店、冷たい料理が中心の店では、排気・給排水・電気・ガスの条件が異なります。店の広さだけで席数を決めると、厨房や保管場所が不足し、営業時の作業が増えるおそれがあります。

内見には、料理と運営を理解する人、設計・設備を確認する人の両方が関われると判断しやすくなります。設備の増設が可能か、建物側の承認が必要か、工事費を誰が負担するかまで確認し、口頭の説明だけで進めないことが重要です。

現地の担当者と、日本側の責任者を決める

海外出店では、設計、工事、会社設立、許認可、採用が別々に進みがちです。各分野の担当者を決めるだけでなく、全体の状況を一つの工程表に集める責任者を置きます。日本側で最終判断する人と、現地で日々の確認を行う人も分けて明記しましょう。

相談先には「すべて任せられるか」だけでなく、「どこまでが契約範囲で、どの業務を誰が行うのか」を尋ねます。通訳、渡航、申請、現地の有資格者による確認などが別費用なら、最初の資金計画に反映します。engineは公式サイトで、市場調査やパートナー紹介から店舗施工までの海外進出支援を案内しています。具体的な対象地域と担当範囲は計画に合わせて確認してください。

開業日より先に、開けられる条件をそろえる

工事が終わった日と、営業を始められる日は同じとは限りません。必要な手続き、設備の試運転、スタッフ研修、仕入れの安定、会計や予約の動作確認まで含めて開業準備です。料理提供までの流れを実際に通し、混雑時に何が止まるかを確かめます。

最初の相談には、業態、希望都市、予算の幅、希望時期、候補物件の有無を持参すると具体的な話ができます。未定の項目が多い場合は、現地調査で何を決めるかを整理するところから始めましょう。

よくある質問

海外出店は物件探しから始めてもよいですか?

候補を見ること自体は有効ですが、契約は営業内容・設備条件・資金計画を確認してから判断します。物件を先に決めると、予定した料理を提供できないなどの手戻りが起こり得ます。

日本の店と同じ内装を再現できますか?

残したい特徴と現地で調整する部分を分けて検討します。設備、材料、施工方法、建物の条件を確認し、同じ見え方や使い心地を目指すことが現実的です。

参考情報・掲載写真

情報確認日:2026年9月28日。各国の制度や条件は変更される場合があります。具体的な営業内容・所在地に合わせ、現地の担当機関や専門家へ確認してください。

制作:engine JOURNAL